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世界の装身具-指輪・耳飾り-ハンドリングゼミ 第3回

ここでは、会員のゼミでの感想や気づいた点、意見、お寄せいただいた図書資料情報などを掲載します(順不同)。


角元 弥子 さん

今回ハンドリングさせて頂いたジュエリーの多くは全面に何かしら装飾が入っており、デザインに魔除けの意志を感じます。
(魔除けへの執念について、文化学園服飾博物館で開催中の『魔除け〜身にまとう祈るこころ』展はお勧めです。)

また、リングのつくりの面で共通なのは、どんなにボリュームのある指輪でも、腕のベース部分はかなり薄い板で出来ており、 それにヨリ線や、ヨリ線をつぶして面を出したもの、粒金などをどんどんマウントして、ボリュームを出していることです。

先日、第一回目の中国南部のものを拝見したときも、ヨリ線をつぶして大きな面を作っているものが多く見られました。

仮に、職人が拠点をもたずに移動しながら仕事をする場合、持ち歩く工具や半製品は少ないほうが良いです。
銀線材をメインにジュエリーを組み立てるという、職人の仕事のスタイルを想像しました。

個別に気になったものは下記のとおりです。

No.3 指輪 トルクメニスタン
腕部分の裏側に(表の模様とは関連性のない)地模様が見えます。
何か他の装身具をリメイクしたように思えましたが、どうでしょうか。

No.32 指輪 コーカサス地方 (ゼミ後、測っていただいた重量は4.9gほどでした)
刻印が気になります。 さまざまな民族・宗教が入り交じる場所です。
刻印は2つあり、私には「・3C4」「◯875」(◯部分は文字ではなく何かの記号)と読めました。
青木さんに、機会があれば見て頂きたいです。

以前、あるトルクメンのジュエリーの刻印については話を聞いたことがあります。
それには製作年と製作者、地金の重量が刻印されており、文字は数字を割り当てて(暗号化して)表記され、年号はイスラム暦、重量はイスラムの単位でした。



沢村 つか沙 さん

トルクメニスタンでは、赤いカーネリアンとシルバーの装身具がほとんどという点が面白く、リングもありましたが、大ぶりなヘッドジュエリーやバングルがとても印象的でした。そういったアジアの民族装身具は、ほとんどの地域がヨーロッパの占領地であったため、ヨーロッパ人は現地のジュエリーを自国に持ち帰る事も多かったようで、トルクメニスタンのジュエリーは特に人気で、ほとんどがもう現地には残っていないとのことで、そういったヨーロッパとの関わりも興味深いです。

そういう歴史の積み重ねがヨーロッパにはあり、異国情緒あふれる物、エキゾチックさを感じるものに魅了され持ち帰ることで、人々が本国にいながらにして、様々な文化の魅力を取り入れることに慣れてきているといえ、それが、今の現代においても現代的なジュエリーやファッションが、自己の価値観で選び購入するという土壌を育ててきたのだと、今回思いました。

私がイギリスから日本に帰ってくるとき、アーティストとして生きるならば、ヨーロッパで活動したほうが生きていけると言われたことがあります。
ヨーロッパでは、クラフト展やアート展で、好きだからと自分の好みで購入する、自分の好みのものを自分でチョイスできるお金に余裕があるシニアがいるので、一人で食っていくくらいなら大丈夫だといわれました。セレクトショップも多かった印象がらあります。

だから日本が、とはちっとも思いませんが、日本は島国であり、異国の憧れを常にもっているとはいえ、やはりのほほんと幸せに過ごしてきたのだな、と感じました。

日本の業界では、ヨーロッパのジュエリーが最先端で一番かっこいいという風潮がありますが、世界の装身具のバラエティでいうと、そんなのほんの一部であることを、また強く感じさせられました。


山岸 昇司 さん

私の装身具の既成認識を超えた実物を手に取らせて頂けるので毎回楽しみに致しております。

今回のビックリはイエメンの番号26から30の引っかかりをものともしない高さのあるノッポ指輪、「引っかからない邪魔にならない」の考え方の対局にあるものでした。

番号10のカザフスタンのリングはあまりの大きさという点で同様に目を引きます。

番号9のウズベキスタンのリングは意匠もメンズ的な角形、私好みで指にぴったりでした。

作りがいささか雑なのは普通の人の普通のリングで“味“というところでしょうか。

その点では露木先生がテキスト外で見せて下さったトルクメン(現トルクメニスタン)の花嫁用髪飾りや腕輪の細やかさには注目です。

ポーラ文化研究所発行「シルクロードの赤い宝石・トルクメンの装身具」の「はじめに」は「トルクメンは中央アジアのカスピ海の南東に位置する国で、絨毯と装身具の分野においては他の民族をしのぐ優れた技術を持っています。」とあります。

それにしても美しい装身具でした。

さて、ゼミ中話題になりました、乾隆帝の帽子に使われている天然淡水真珠についてVTRを再視してみました。(NHK番組 中国王朝 よみがえる伝説 「乾隆帝と謎の美女、香妃」)

「直径3センチを超える真珠 満州族の出身地東北部の川だけで産出するもので正しい真珠「正珠」と呼ばれている」と説明していました。写真1 写真2 写真3 写真4

TV番組ついでにもう一つご紹介いたします。

フジテレビのバラエティー番組「アンビリバボー」でオマーンの前国王が日本女性と結婚するためにすでにいた3人のお妃に別れを告げるシーンがありましてお妃役の女優さんが指に着けていた指輪に着目しました。(日本のタレント事務所が集めた俳優さんたちだと思います)

当ゼミで以前、手にした教科書P77の015ミラーリングと同じ枠意匠ではありませんか。

女優さんの私物なのか、タレント事務所で用意したものか、「アッ、イスラム系の指輪だ!」とうれしくなった次第です。

写真5 写真6


吉田 明泰 さん

今回は、中央アジア・西アジアの装身具。これまでの東南アジアと違い、私にとっては縁遠い国々で、露木先生の「トルクメニスタンのジュエリーの特徴は・・・」「ウズベキスタンは・・・」という講義のメモを取るのが精一杯の2時間でした。

今回の作品からは、イエメンのリングなど数点を除くと、極端に大きかったり、高さ高いリングがすくなく、おでかけ用ではない様子から、各国の文化慣習には不案内なものの、リングが各地の暮らしに溶け込んでいるように感じました。

拝見したジュエリーのなかに、日本のモモイロサンゴ様の珊瑚が使われているジュエリー(No.24)があります。チベットのジュエリーの中にも同様のものがあり、真珠同様、日本産珊瑚もかなり世界に広くもたらされているのではないかと、改めて思いました。

今回のゼミとは関係ありませんが、「会員の方へのお知らせNO.197」で「池田重子のおしゃれ」展のご案内をいただきありがとうございました。帯留が、和装のキーアイテムとして活躍している多くのコーディネートが提案されていました。

これまで、根付愛好家が根付を愛玩するように帯留を単体として眺めていて、どのように使われていたのかについてほとんど考えてきませんでした。どちらかというと、今の女性がしているピンキーリングのように、ちいさな、自分の楽しみのために使う装身具だと思っていたので、今回、帯留が、和装のコーディネートの主役として、大きなインパクトを与えている様子に、すっかり驚きました。


奥田 文子 様

今回は、これまで2回と比べて落ち着いて見ることができました。
アジアの装身具の雰囲気に慣れてきたためと、今回の作品がこれまでのものよりおとなしく感じられたためだと思います。

トルクメニスタンは、カーネリアンへの思い入れの強さが伝わってきました。
花嫁用飾りから日常使いのものまでカーネリアン。
美しさ、力強さ、魔除けなど、さまざまなものをあの赤色の石に見い出したのだと思うと、改めてカーネリアンを見つめ直してみようと思いました。

1、3の指貫付きの指輪はめずらしく、しかもそれぞれタイプの違う指貫がついていて、生活が垣間見える気がしました。
腕飾りの蛇の頭のモチーフは、悪霊の仲間を身に着けることで魔除けにするという考え方が新鮮でした。

ウズベキスタンは、シャラシャラとした飾りや色使い、凝った装飾がかわいらしく、日本でも受け入れらやすいデザインだと思いました。
サウジアラビアやオマーンはもっと力強く、その中にも細かい細工が施されていました。
サウジアラビアはトルコ石のような存在感のある石を使っているのに、オマーンはあまり宝石を用いていないのも興味深かったです。

イエメンは、凝った装飾の指輪をたくさん見せていただきました。
ちょっと邪魔になるかなと思うデザインも着け心地がよく、女性が楽しんで身に着けていたことが想像できました。

コーカサス地方の指輪はとても異色でした。
曲線はなめらかで武骨なところがなく、現代的で洗練された美しさがありました。
他の地域とこれだけ違うと、装身具に対する考え方も変わってくるのだろうかと考えさせられました。

今回もいろいろな発見のある勉強会でした。
どうもありがとうございました。


さいとう まちこ さん

指輪耳飾りゼミと日本の装身具ゼミに並行して参加しておりますが、同じ装身具といっても、その意味合いの違いを毎回感じております。

指輪耳飾りゼミで扱われる装身具が持つ、民族固有のデザインへのこだわりや、魔除けなどの願い、装身具をつけるときのルールの厳格さや、そこから垣間見られる社会における女性の立場など。
例えば、参考文献として挙がっていた「シルクロードのアクセサリー」(文化出版局)内、向後紀世美氏の文章に、
チュウラというネパールの女性が身に付けるポピュラーな腕輪について、次のように記述されていたことが印象に残っています。
「そのチュウラも、夫が死んだときは割ってしまう。未亡人は、金属の腕輪はしてもよいがチュウラだけは絶対にするのを許されない。私のネパール語の先生であるスシュマ夫人は、『ねえ、ひどいと思いません。小さいときからなれ親しんだチュウラをつけるのさえ、夫しだいなんですものね。』」

この例のように、指輪耳飾りゼミでは、ハンドリングの最中に、「この装身具をつけていた女性はどのような社会的な立場・状況で、何を思っていたのだろう」などと考えないわけにはいきません。
それに対して、日本の装身具を見るときの感覚は、もう少し軽快な感じがします。

いずれにしても、装身具という小さな物が、ほぼ無限の考察の対象を与えてくれるものだと、その奥深さ、魅力を再認識しています。


戸倉 博之 さん

以下の2作品が気になりました。

17 指輪オマーン(テキストP118)
は、レバノン国旗にも描かれているレバノン杉モチーフでは?と思いました。
レバノン杉で思い浮かぶものといえば、フェニキア(現レバノン)と植民都市商業国家カルタゴ(現チュニジア周辺)です。
どちらも学生時代、旅をし観てきました。
フェニキア人は国土の杉を切り出しガレー船を造り、最盛期には地中海の東側半分の交易を支配したとされています。
商業、操船技術と粒金(エトルリアも有名ですが)などを施した宝飾品細工が得意な民だったといわれていて、現在のレバノン人達にも宝飾細工技術は受け継がれています。

26-30 指輪イエメン(テキストP127)
は、イエメンの世界遺産、世界最古の摩天楼都市と言われる日干し煉瓦で出来ているサナア旧市街ja.wikipedia.org/wiki/*サナア*
がモチーフ(27や30)ではないかと思いました。
その中でも26や29は、旧市街に聳え立つイスラムの尖塔ミナレットを模して作ったのではないか?と想像しました。
身に着けるだけで神聖にして神アッラーに近付ける。
銀はイスラムでは神、又は神に近い存在でも有るので28のように毎日摩耗するまで祈りを捧げたのかもしれません。




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