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日本の装身具ハンドリングゼミ 第22回

ここでは、会員の方のゼミでの感想や気づいた点、意見、お寄せいただいた各種情報などを掲載します(順不同)。


中村 園子 さん

今回も大変興味深い勉強会でした。
戦時体制期という大変な状況の中でも、宝飾品を売る方も身につける方も必死に道を探していく姿勢にたくましさを感じ、現代の不況の中でも希望を感じました。

地金(素材)も石も使える範囲で工夫し、デザインや彫り、作り込みによって豪華さや品を演出しているところに過去の装身具とまた違った強い想いも感じられて少し怖いくらいです。
特に(帯留14)の鉄兜のモチーフに桜が散っている図柄が、戦時体制期ならではと思いましたが、びっくりしたのと戦争の不幸を感じて気分が沈みました。
そんな中でも、(帯留16、17)や(帯留4、5)のように手を抜くことなく、むしろより時間をかけて(多分楽しく)制作している姿も想像できて嬉しくもありました。

こんな時代だからこそ地金の配合も工夫せざるを得なく、いろいろな合金ができていたのも興味深く、今度(11月)の分析の報告会が楽しみです。
宝飾品に使う合金のバラエティさは、他の時代にはないこの時代の大きな特徴なのかもしれませんね。

ジュエリー文化史研究会も来年新たにスタートと聞いていますので、しばらく寂しいですがまたご一緒できればと思っています。
露木先生、大変貴重な勉強会をありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
みなさんにもまたお会いできるのを楽しみにしています(^-^)/


角元 弥子 さん

戦時体制期の装身具はいずれも、思うように技術、製作時間、素材が使えない状況がひしひしと伝わってきます。
その中で異色の<帯留(17)>が印象に残りました。白檀を彫って彩色した能面と扇の帯留に、銀糸を使って扇の刺繍が施された帯締めのセットです。
戦時体制とはいえ、戦況や生活環境によりさまざまなライフスタイルがあったことが伺えます。

造りの面で気になったのは<櫛(2)>です。
虫食い跡があることから天然由来の素材ということですが、加飾方法が面白いです。切金が、表裏それぞれの表面近くに埋め込まれ(表裏とも同一意匠)、花の部分には薄貝が重ねられています。
初めて見る仕様で、どのように製作されたのか大変興味を持ちました。もう一度見たいくらいです。

拝見した装身具をきっかけに、背景の流通や文化に対する興味が高まります。
今回の配布資料の『わが道錺一筋』はぜひ読んでみたいと思います。

来年の再開を楽しみにしております。
外貨獲得のために作られた装身具類、なかなか見る機会がなく、大変興味があります。


植田 友宏 さん

貴重な戦時中の装身具を拝見させて頂き、有難うございました。

戦中・終戦直後は模造品・合成石・代替素材など価値が低い装身具、 と言うイメージが強かったのですが、日々軍靴の足音が増す、不安の募る生活の中で女性たちがお洒落に気を配り続けた事、職人達が手を抜かず装身具を作り続けた事、売り手も工夫して商売を続けた事など色々な面で勉強になりました。

やはり装身具は時代を映す鏡なのですね。

引き続き宜しくお願い致します。


青木 千里 さん

今回はマル停、マル公、マル協、特免という戦時下の状況のお話を興味深く思いました。そういう商品タグ、また税金の表示は物と揃って一級の資料ですね。

 ハンドリングの作品ではやはりサンプラチナ の硬質でシャープな細工のものが美しい。硬い、細工がしにくい、そういう当時の証言とは裏腹に職人さんの技量が偲ばれます。

 第二次大戦時、日本ばかりでなく海外のジュエラーも貴金属の供給が厳しくなり苦心していたようです。VAN CLEEF & APELS では「 s t y p t o r 」という錫と銀の白色合金を使った作品を多く残しています。(1944年頃) s t y p t o r のみで無くわずかな金のパーツをあしらって高級品らしい品格を纏わせているのがミソ。
どの国でも金に似せるのは難しいけれど白色ならと知恵を絞ったのでしょうね。

今回の櫛(2)に値札がついており、の物価が話題になりました。
参考になりそうな1冊をご紹介しておきます。

物価の世相100年  岩崎 爾郎 著  読売新聞社 発行

明治元年から昭和56年までの世相と合わせて物価、賃金が具体的に示してあります。特に賃金は女子労働者の各業種別が紹介されている年もあってこのお給料でどれくらいの装身具を買ったのだろうかと、想像が膨らみます。


大崎 典子 さん

合金が好きなので、今回はたくさんの合金製装身具をうれしく拝見いたしました。

白金合金は硬いと職人さんから嫌がられたそうですが、時代を経ても彫金が崩れないのが魅力でもありますね。

帯留4,5は特にとてもかわいらしかったです。

・櫛1

皇軍万歳とともに「水谷八重子」「美ち奴」「尾上菊五郎」「市丸」「双葉山」「男女川」など役者に芸者歌手、相撲取りの名前が書かれているのが興味深かったです。

中国に出向いた慰問団を記念した櫛なのかと存じました。
でもどなたが身につけられたのでしょう……。
名前を書かれた方々のジャンルがばらばらなので不思議です。

・カフスボタン4

柿の丸さと赤さがかわいらしく、どんな服装に合わせられたのか気になりました。
シックに決めると赤色が目立ちそうですし、
お洒落上級者の方が使っていらっしゃったのでしょうね。

いただいた松山繁三郎の著書のコピー、帰宅後も調べましたがやはり加藤藤十郎ではなく「加藤信太郎」だと思われます。
加藤信太郎は三金工業の創立者でサンプラチナらしき合金の特許も何度か取っています。

〇公や〇停、〇協、特免といったマークの意味も教えていただき非常に参考になりました。
政府は細かく指示した上で物価統制や販売制限を行っていたのですね。

11月の白色地金分析報告会、予定つき次第参加させていただきます。
研究会も来年再開予定とのこと、嬉しいお知らせありがとうございました。


沢村 つか沙 さん

この時代に入ってきて、次第に祖母、祖父の時代とつながっている感覚があり、非常に現代の宝飾業界への流れというものも興味深くみていきたいと思います。

簪というアイテムは、現代においてはあまり高額品の所謂“本物”というものを多く見る機会はありませんが、日本人の黒髪は、美しく、輝く装身具が映える事もあり、今後の商品開発に活かしていきたいと思いました。

このゼミを通して、初期のゼミから今回のゼミまで、日本人はどの階級も様々な素材を飾りにしてちょっとおしゃれを楽しむという気質がある、とう点は毎回感じてきた発見です。

和装の良さが忘れられつつあるのと同時に、日本の着飾るという心が、若い世代には希薄になってきているように思いますが、日本にずっと息づいてきた着飾るというスピリッツを改めて掘り起こし、西洋のものを真似したジュエリー時代が終わりつつある今、もっと海外に日本のデザインや技術のよさをアピールできるような活動をしていければと、思います。

今回価格の事に関してゼミで質問させていただきましたが、どのくらいの感覚で買っていたのか、というところも気になりました。


小宮 幸子 さん

戦時体制期というと、陰鬱なイメージしかなかったのですが、良い意味で裏切られました。「贅沢は敵だ」という標語が生まれ、次第に重苦しい空気に包まれていく時代です。それでも人々は生活の中に美しさや彩りを求めていた。それが作品からひしひしと感じられました。

プラチナの代替品として使われたサンプラチナムは、まるでアルミニウムのように軽くて驚きました。硬く加工しにくいといわれるのに、たがねで繊細に彫り模様が施された指輪や帯留めは、プラチナ製装身具と遜色ない仕上がりです。作り手である職人と、美しい装身具を求める人、双方の熱意がなければこれらの作品は生まれなかったでしょう。

そして今回も感心したのは男性用装身具のデザイン性の高さでした。特に陶磁製カフスボタン(4)(5)はかなりお洒落上級者向きです。(4)の柿は鮮やかなオレンジが際立ち、合わせる服も、使う季節も限定されます。(5)の帆船モチーフは柿よりは使いやすいかもしれませんが、着けていく場所やコーディネートは選ぶはずです。お洒落心、遊び心を忘れない男性がいたことに嬉しくなりました。

マル停、マル公、マル協という言葉は今回初めて知りました。この時代だからこそ生まれた興味深い言葉だと思います。

第1回目のゼミから5年半が経ちます。露木先生、事務局の深谷さん、クラスの皆様のおかげで貴重な時間を過ごせました。ありがとうございました。またゼミが再開される日を心待ちにしています。


齋川 陽子 さん

今回は戦時下のジュエリーをハンドリングしながら学ばせていただきました。毎回貴重な史料をじっくりルーペで覗きながら研究出来ることは、本当に楽しい時間です。

今回の戦時下のジュエリーは、戦中の贅沢品への精神的に威圧される状況下に加え、貴金属、宝石の使用さえも制限された制作は、果たしてジュエリーとしてはどうなのか疑問に思っておりました。というのも、前回の大正から戦前までのジュエリーが素晴らしく、華やかな西洋の技術と文化と日本の技術、伝統が混在するとても素晴らしい作品が溢れていたからです。

ところが実際のジュエリーは、限られた材料でありながら工夫に溢れ高い技術の美しいもので、大変驚きました。硬い素材と言われるサンプラチナの薄い切り出しの板を、更に切り込みをいれたり、ミル打ちをしたり(作品帯留めNo.5)出来るだけロウ目の無いように切り込みを上手く使ってリングを仕上げたり。(作品指輪No.3,5)随所に苦労と工夫がうかがえました。ただ素材の難しさは多分職人さん泣かせのはずで、(作品帯留めNo.6)のように様々なロウを使い苦労した様子がわかります。

戦時下とはいえ、美しいものへのこだわりと、素材を工夫しての高い技術は圧巻でした。木彫りの帯留め(No.17),骨に螺鈿を施したもの(No.15)、陶磁を使った帯留め(No.10)等。

ジュエリーの歴史が覗けて、貴重な時間でした。
ありがとうございました。


河野 英理 さん

今回は、戦時体制下のジュエリー。

合金、陶磁、木等の素材を多く用いたジュエリー。素材的には高価なものはほとんどありませんが、どれも非常に工夫して作ってあり、デザインも全く手抜きがない所が素晴らしいと思いました。

使用できる金属、石類等使用できる素材に大きな制約を受け、苦心しながらも、使える材料にマッチしたデザインのものを作り続けた職人たち。それは、需要があったからこそ出来たもので、どんな状況下でも素敵なものを身につけたいという、日本人の心が生み出したものなのでしょう。

個人的には、戦争をイメージさせるデザインのもの、鉄兜、勝虫(とんぼ)、船の操舵輪、皇軍万歳等を見られたのが、大変興味深かったです。

今回で、研究会は最後かと少しがっくりしながら参加したのですが、来年再開していただけるとのこと、大変嬉しいお知らせでした。再開を楽しみにお待ちしております。

追記
ゼミの最中にお話が出て、後日詳しく送られてきた、青木さんのお母様の体験談について。

落ちてきた焼夷弾についていた、綺麗な青いリボン。危ないものとわかっていても、心惹かれてしまった少女の心。戦争中でも、いえ、戦争中だからこそ、尚更美しいものを欲してしまったのかもしれませんね。頭の中にくっきりとイメージが浮かぶような、印象的なお話でした。




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