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日本の装身具ハンドリングゼミ 第16回

ここでは、会員のゼミでの感想や気づいた点、意見、お寄せいただいた図書資料情報などを掲載します(順不同)。


角元 弥子 さん

前回と同じく、日本髪用の髪飾りも、生活環境の変化が感じられて面白かったです。

仕様こそ継承していますが、意味が秘められたようなデザイン表現は薄れ、
色彩豊かでぱっと見て分かりやすく、ファッションアイテムとして効果的なデザインが多いように思いました。

特に気に入ったのは2つです。

(3)は、左右非対称で流れのある、日本らしいデザインのピクウェ技法。白甲を土台にしたものも珍しいと思いました。
(29)は、モチーフは稲穂ですが櫛全体を包むような有機的なデザインで、アール・ヌーヴォーの香りがします。面白いです。

今回、蒔絵技法のもの以外に使われている、塗料の素材について気になりました。

(7)(8)(9)あたりは、塗りっぱなしのどろっとした艶と肉厚感がある塗料で、仮に漆であれば、漆に乾性油(油絵の具に混ぜて使うタイプの油)を混ぜたものかもしれません。
この方法は手っ取り早く肉厚に塗りたいとき、塗りっぱなしで簡単に仕上げたいときに現在も使われます。

漆でない可能性も探ってみたく、この時代の塗料の選択肢について、少し調べてみました。
時代と塗料の進化の関係をまとめた資料がありましたので、興味のある方はこちらのP.74-77の年表を参照ください。

「塗料技術発展の系統化調査」 2010年 国立科学博物館 技術の系統化調査報告第15集
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/060a.pdf

例えば、年表で昭和元年にあるニトロセルロース・ラッカーは、ピアノの黒塗りなどに使われたそうです。
この時代になると、漆の特性が必要な技法(=蒔絵)でない場合は、他の塗料を使った可能性も排除しないほうがよさそうです。


渕上 清志 さん

2回目の参加です。

今回は、大正〜昭和初期の鼈甲の櫛と笄を中心として沢山見せていただきました。

現存するブランドの刻印の入ったものなどもあり、戦前と戦後の連続性を感じることができるものもありました。

仕事が細かく丁寧なものが多く、日本髪用櫛・笄(6)等は、葉っぱを表現するのに、金の色を4色に分けており、当時の方々の感性の細やかさを感じ取ることができました。

先生や参加者の方々でも、これはどうやって作ったのだろうか?と、明確な答えの出ないものもあり、当時の技術の奥深さを感じることができたとともに、思考や議論の過程も大変興味深かったです。


鈴木 はる美 さん

11月5日の「明治大正期の櫛笄」の櫛15 鼈甲千鳥に波図新橋形銀棟櫛についての「千鳥と波」の図柄を調べました。

故事ことわざ辞典 
[[波に千鳥]は、絵のような調和のよいもの。とりあわせのよいもの]のたとえとある。類義としては「梅に鶯」「猿に絵馬」「獅子に牡丹」「竹に雀」「牡丹に唐獅子」「竹に虎」「牡丹に蝶」「松に鶴」「紅葉に鹿」「柳に燕」などがある。

北斎の「今様櫛●(きんは手編に金)(いまようせっきん)雛形(ひながた)」上巻
上の図「風を落とす波」には、左端に「波間の千鳥」

北斎の「海上の不二」には、千鳥が飛ぶ


男波
低い波の次に打ち寄せてくる高い波。また、高低のある波の中で、高いほうの波

女波
大きく寄せる男波(おなみ)の前に、低く打ち寄せる波。また、高低のある波のうち、低いほうの波

『柳の糸』より
「江島(えのしま)春(しゅん)望(ぼう)」には、男波と女波が描かれる。


ちなみに「千鳥」は冬の季語です。11月12.13日は湖南におりましたが、早朝の琵琶湖には千鳥が遊んでいました。『万葉集』の「淡海の海夕波千鳥汝が鳴けばこころもしのにいにしへ思ほゆ」とあるように、古来より、詩歌や絵画の素材として愛されてきた「波と千鳥」には、様式化された花鳥画を見るような趣があり、非常に雅で美しいと思いました。

参考図書は『「太陽別冊」北斎決定版―生誕250年記念』平凡社 2010年です。


周防 貴紀 さん(石井恵理子さん代理出席)

一番印象に残ったものはやはり青貝細工(17)で根気よく螺鈿の色と形を合わせていったところで最後に、辻褄を合わせた辺りが、創り手としての苦労がわかりました。

意匠として良いと思ったのは(16)の蜘蛛の巣の櫛です。
透かし模様を上部にして真珠をアクセントに髪に刺し外すと実際は櫛の部分に蜘蛛の巣が絵描かれているデザイン写真を妻に見せてところ多いに興奮しておりました。

それから、 私はやはり糸鋸で抜いたものだと確信しておりますが (13)はいかがでしょうか。


田島 和美 さん

今回は大正・昭和初期の日本髪用の髪飾りのハンドリングゼミに参加させていただきました。

今までにの櫛や笄は見たことはありますが、ほとんどガラスケースに入ったものを見るだけでした。

今回は手に取って見ていろいろな素材の組み合わせやたくさんの技法があることに感心しました。

私はジュエリーの制作の仕事をしてきましたが、螺鈿や蒔絵、象嵌やノセ文様、べっ甲や漆などはほとんど経験がありませんのでこんな細かい作業はいったい何時間くらいでこの時代の職人さんは一つの櫛を完成させるのだろうと思いました。

興味を持ったものは透かした薄い地金を2枚合わせてべっ甲櫛にはめ込んだ「もなか櫛」で、特に作り方で、櫛を先につくるのか地金部を先につくるのかどっちなんだろうと思いましたが、自分ならきっと先に金属部分を作りそれに合わせて櫛を作った方が作りやすいのではないかと思いました。それは櫛の方が素材がやわらかいからです。本当のことはわかりませんが。


小宮 幸子 さん

今回拝見した中で特に印象に残ったのは(11)〜(14)の「もなか櫛」です。べっこうや漆の有機的な柔らかい部分と、地金の部分のコントラストが明確ですっきりとしていて、大変繊細な透かし模様により軽やかさがあり、モダンに感じました。特に(13)べっ甲幾何連続模様金もなか櫛はどのように作られたのかと話題になりました。現在再現するのが難しい技術も少なくないのだろうと考えさせられました。

デザインのモダンさ、という点で選ぶと、(19)べっ甲蜘蛛の巣蒔絵櫛、(23)べっ甲蝶の中に麻・青海波図透かし櫛、には感動しました。とりわけ(19)は蜘蛛の巣に何か意味があるのでは、と想像をかきたてられる、粋で神秘的な魅力を感じました。

装身具に見られる植物や小物、模様などの意匠について、ゼミの皆さんの意見が聞けるのも大変勉強になります。普段から着物や日本画を見る際に、意識してみたいと思います。



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