研究会、ゼミ概要

主宰者より

研究会参加動機

ゼミ日程(2018年)

装身具ハンドリング作品

ゼミに参加して

ジュエリー文化史サロン・特別講演会

論考・研究レポート・エッセーなど

文献資料

参考:伝統装身具ネット図鑑

会員へのお知らせ

会員限定ページ

日本の装身具ハンドリングゼミ 第11回

ここでは、会員のゼミでの感想や気づいた点、意見、お寄せいただいた図書資料情報などを掲載します(順不同)。


角元 弥子 さん

全体に、婚礼用以外は小ぶりなものが多く、髪型・服装も同様に軽くカジュアルに変化していたのではと思いました。
以下、ハンドリングさせて頂いたそれぞれについてのコメントです。

16-5-2 孔雀石(マラカイト)の玉簪
マラカイトの模様が面白いと思いました。
現在のカボションカットだと縞が正面にくるものがほとんどですが、こちらの2点とも縞を側面に、目玉のような等高線状の模様を正面に配置しています。

16-8-1 馬爪の櫛
峰の側面に端から端まで、切削加工由来ではなさそうな人工的な凸線があるのが気になりました。何かを固めたものの可能性はないでしょうか。

16-4-7 白蝶貝の櫛
マザーオブパールを本体に使った櫛は、日本以外ではスペインにありそうです。

16-4-2-C 鼈甲に蒔絵の櫛
花柄の余白、菊の花芯に、魚々子状になっている部分があります。
漆ではこの密度に凸の点描きはできないので、鼈甲を魚々子状に加工できるのかどうか知りたいです。

16-4-6 堆朱の櫛/16-5-3 堆朱の玉簪
複数色の漆を塗り重ねて積層し、模様を彫って積層の色合いをみせる「彫彩漆」の技法による4点です。
彫漆技法の分類

特に16-4-6の写真右の青海波調のものは、技術もデザインも洗練されていて素敵だと思いました。
この時代、貴金属や宝石のキラキラした華やかな装身具が増えていく中で、手間がかかる割に地味なこういった装身具がどんな風に捉えられていたのか、いろいろと想像します。
露木先生の仰っていた、戦後の復古ムードの中で、日本人にとってもTHE 日本なデザインとして新鮮だったのか。それとも江戸時代から継続して愛好されていたのか、など。

なお、彫彩漆は、螺鈿など他の漆芸技法と同じく大陸から伝来した技法で、日本で唐物として珍重され、本場で廃れた後にも、技術継承した和製のものが継続して製作されたようです。
蒔絵と違って取り組む職人が限定的で、幕末の高松藩時代から現在まで、四国・香川に主に伝えられています。

参考までに、昨年五島美術館で開催の『存星 -漆芸の彩り』展のカタログから、同じ繰り返し模様の彫彩漆、宋〜元代の盆の写真を添付します。

では、次回も楽しみにしていますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

                             



山岸 昇司 さん

図16-1-1 清国軍と戦う日本軍の図櫛
日清戦争の勝利に沸く日本の人々に売りに出された櫛。
中国・清国軍の兵に切りつける日本兵の図柄が描かれています。

今見ればおぞましい限りですが当時はこれを受け入れる素地が日本国民の心を満たしていたのかと思うと、改めて社会世情や時代背景を理解することの重要性に気づかされました。

図16-3-2 婚礼用 べっ甲櫛・笄セット
細かい細工の施された笄を着けた花嫁さんの心中やいかに、さぞうれしかったことでありましょう。当時の婚礼衣装が綿帽子だったのか角隠しだったのか、どう装ったのでしょうか。ネットで検索すると
引用ここから:
明治時代頃の民間では、黒縮緬紋付裾文様の振袖などに白羽二重の下着に角隠しという花嫁衣裳が一般的になりました。
http://u-b.jp/knowledge/bridal/konrei_6/konrei_6.html
:引用ここまで
とのこと。櫛笄から調べ、色々な知識がひろがります。江戸期は「人前結婚式」だったのが欧米文化を模倣する文明開化の影響で「神前結婚式」に移行したなど、驚きです。

図16-4-6(右)彫彩漆の櫛
美しい青海波文様に惚れ惚れしました。しかも数種の色漆が重ねられ波の模様に並みの模様らしからぬ雰囲気を与えています。

図16-4-7 貝の櫛
夏用の櫛。これを黒髪に着けて打ち水をした横丁を行く浴衣姿の年増のお姐さん、その後ろ姿をちょっと想像してみようものなら、そりゃあもうなんとも粋じゃありませんか。透け感のある生地がいっそう涼しさを醸し出しています。

以上ご報告申し上げます。ありがとうございました。



河西 志保 さん

この度は約50点もの櫛、簪、笄他多くのものが拝見できましたことを、まず感謝申し上げます。

初めに日本髪、着物文化を知らなかった私でしたので、まずは昔の髪型の流れを調べてみました。NHK「美の壺」の「櫛」より、奈良時代まで髪を高く結い上げ、十二単で髪を下すように変わり「垂髪」になったので櫛は長らく実用の道具となり、簪など髪を飾る風習がなくなったのも納得です。その後900年の時を経て櫛が黒髪を飾ったのは江戸時代とのこと。明治時代になると銀杏返し、丸髷など髪を結い上げ装身具を楽しむようになります。江戸時代から昭和中期まで300年に渡り櫛、簪、笄、根掛けなどは、日本髪から夜会巻き、束髪へと髪型が変わるにつれ装身具が変化していく様子が少し納得しわかりました。

この明治中期の髪飾り図「東京風俗志」で一纏まりで解かりやすく、櫛の形では政子形(16-4-2)月形(16-4-3)達磨形(16-4-5)など複数あることを知りました。ポーラ文化研究所主任村田孝子さんが飾り櫛の中でも「返し文」が女性の憧れだったとありました。「返し文」は表と裏の柄が違うのはすれ違った時にちょっと振り返るとまた裏模様が見えるように工夫され、遊び心と粋さお洒落さを感じます。

簪、櫛の各部名称が載っている資料がから、簪の二の肩から引付あたりに彫があるものや、初めて堆朱=彫彩漆(16-4-6)(16-5-7)という工芸法を知りました。また玉簪は普段使いの装いなのでしょうか?サンゴやマラカイトもいいですが、私は(16-5-4)の白蝶貝の作品は今の時代でも身に着けたい美しさです。

根掛も初めて知りました。丸髷、銀杏返しのもとどりの後ろにかける飾りは、やはり後ろ姿や横から見られることへの美意識を感じます。

帯留のバチン留めは、表の桐紋金製で裏座と金具は赤銅と細かい部分まで手が込んでいるのは驚きました。セミナー受講生の方から拝見できた地金の処理の見本を見て、昔の方の知恵と技術に驚き、今もまだ受け継がれていることもっと詳しく学びたいと思いました。

明治中期に生まれたセルロイドの模造品がいくつかありましたが庶民にも日頃からお洒落をするためには必要だったのでしょうか。やはり、質感や重さに違いを感じました。

コレクターの池田重子さんのお話に、「時代と格を合わせるのを基本として、黒っぽい装いには黒甲の髪飾りを選んだり、装いのテーマや季節に合わせた意匠にしたり、また「揃いすぎ」の窮屈さをさける息抜きの場として遊び心のあるものを選んだりしています。ですから、髪飾りはコーディネートでも重要な役割を果たします。」池田さんと昔の女性達も同じ考えなのでしょう。

髪は女性の命、櫛は美しく結い上げた黒髪を飾る装身具として、美しく着飾りたいという思いは今も昔も変わらないが今の時代のように多種多様な物がある時代と違って、和服の女性には数少ないお洒落アイテムだったことに気付かされました。

現代のようにダイヤや色石の輝く素材と違って、鼈甲、象牙、サンゴなど半透明や不透明なものに、さらに蒔絵や透かし彫、螺鈿、象嵌、彫彩漆などの装飾を施し、絵師たちの絵柄など100年以上前の文化に触れ、本当に繊細で優美な美しい世界を教えて頂く機会でした。直接触れさせて頂くことに改めて感謝申し上げます。 青梅の「澤ノ井櫛かんざし美術館」にも足を運びたいです。



奥田 文子 さん

今回、一番印象に残ったのは、図16-3-2 婚礼用べっ甲櫛・笄セットでした。
べっ甲であれだけの厚みと豪華な装飾を目の前にすると、やはり圧倒されます。
子や孫の代まで残すつもりであつらえたのでしょうか。

図16-5-2の簪や図16-6-2の玉根掛の孔雀石(マラカイト)を見て、あの緑色や質感は黒髪に似合うと思いました。
髪飾りに使う素材としては、緑色がはじめて出てきた気がします。

図16-4-7の貝の櫛は非常に美しく、安価なものだったと知って驚きました。
耐久性が低いという難点はあるとしても、現在にあってほしいと思います。

貝の櫛や図16-5-4の貝の玉簪、図16-5-5の銀花模様簪のむくげなど、夏のこの季節に見ることができてうれしかったです。
今回も貴重なコレクションをハンドリングさせていただき、ありがとうございました。


和田 実穂 さん

明治中期という事で、櫛・笄・簪も歴史を重ねたせいか、デザイン的にも円熟したものを感じました。

奇をてらったものは少なく、高価な素材を使い、良く見ると非常に凝っていても、パッと見は主張し過ぎない洗練されたものが多いように思いました。
モチーフも、四君子や家紋など、季節感に縛られない物が多かったのでは?
少しずつ、現代の合理性に、近づきつつあるのでしょうか。
個人的には、リアリティがあって好ましく感じました。

そんな中で、マラカイトの深い緑や白蝶貝の明るい色調は、とても新鮮でした。
16−4−7等
白蝶貝の質感は、現代の日本女性にも非常に好まれており(腕時計でも、白蝶貝+ダイヤの文字板は最強の組み合わせです)
この頃から、女性の心をとらえていたのかと思うと感慨深いです。

形状では、“お初形”が登場し、小ぶりで可愛らしく、人気の理由が分かる気がしました。
が、ここは敢えて、
16−4−5
達磨形の形状が、珍しく、気になりました。
(装飾はかなり劣化しているようでしたが、気に入って使い込んだ証しなのでは)
僅かに非対称な絶妙感があり、顔周りにさすと、新鮮なバランスに見えそうです。
何より、見えない半分を想像させて“達磨形”というのが、とても日本人らしい粋な名称に感じました。

今回は、最後の感想の時間は取れませんでしたが、ハンドリングはじっくり行えたように思いました。
でも皆さんの感想も聞きたいし、時間配分は難しいですね。
次回も楽しみにしております。


土田 慶太さん

今回のハンドリングゼミで印象的だった作品は、婚礼用べっ甲櫛・笄セットです。欧米の装身具のように貴金属や宝石でキラキラ光っているわけではありませんが、べっ甲の厚み、細工を見て、実に豪華だなぁと思いました。

もう一つが、パチン式の帯留。今の帯留の殆どは帯締め紐に通す単純な装飾品ですが、パチン式帯留は装飾を兼ねた実用品。写真で見たことはあったのですが、今回のゼミで実際に手に取ることができて良かったです。現代の和装に取り入れやすいものの一つが帯留だと思いますので、デザインを色々と考えてみたいですね。


八向 志保 さん

今回は明治中期ということで、かなり繊細で技巧にも工夫が凝らしたものが多かったように思います。
特に印象に残ったのは、「似たれり」のものたちです。
16-8-1 馬爪、牛爪、卵甲の櫛、16-8-2のセルロイドの模造べっ甲の櫛は、パッと見た限りでは偽物とはまったくわからない品質でした。また、16-9-1で象牙櫛にもセルロイドが使われているとは驚きました。16-10-1 セルロイドの模造珊瑚玉簪 や16-10-2 模造サンゴ玉根掛も鮮やかな色で印象的でした。
「似たれり」が偽物とは見させないような技術で作られており、本物の4割くらいの値段で売られたということからも、「似たれり」には、本物らしさが認識されていたようにと思いました。


吉田 さやか さん

今回も大変興味深い装身具を拝見させていただき、ありがとうございました。

とてもインパクトがあったのは、図16−1−1日清戦争の清国軍と戦う様子が図柄となった櫛です。
勝利を国民全体が祝う世情に馴染みにくく、プロパカンダ的な意味合いを持ち合わせた物なのか、いわゆる記念コイン的なものなのか、と思いましたがそれを粋としたという点に時代の風潮の違いを感じます。

また、たくさんの漆のものがあり、16−4−6の彫彩漆の櫛、16−5−3の簪はカメオに通ずるものを感じ、またその完成度の高さに強い関心を持ちました。

考えてみれば当然なのかもしれませんが、露木先生のお話の中で玉かんざしは、玉を付け替えることが可能な作り と伺い目から鱗でした。

以前、拝見しました藤田君代夫人の櫛の中に葵紋の物があり、強い興味を覚え、調べておりましたが芝・増上寺に眠る徳川将軍と正室・側室等の方々の副葬品の文献を見ていたところ、12代徳川家慶公の側室・見光院の埋葬品がガラス玉2ヶのみだった記述がありました。
実物の写真は見ていないのでサイズ等は分かりませんが、例えば、このガラス玉2ヶは玉かんざしの玉だったのでは?等との想像も広がりました。

また、この文献には装身具のその他の興味深い副葬品もありましたので一部ご参考までに記載いたします。

・14代家茂公
ー 懐中時計(両蓋つき金側、K18、ルビー10石付、蓋に細かい模様有、
表文字盤にBENSON London、後蓋を開けた内蓋ネジ孔の上に
J.W. Benson. 25 Old Bond Streetの刻あり、革ケース入 1ヶ)

・13代家定公の正室 天親院
ー花かんざし(ガラス製、歩揺るつき)

・6代家宣公の側室、7代家継公の生母 月光院
ーこはぜ (金と水晶 各1)

(「骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと」東京大学出版会 鈴木尚
「増上寺 徳川将軍墓とその遺品・遺体」東京大学出版会 鈴木尚ら
*同内容の2冊ですが、下が論文、上が一般向けに出されています)


岩崎 望 さん

今回のハンドリングゼミでもとても数々の装飾品を直接手にとって見せていただくことができました。どうもありがとうございます。作品そのものではないのですが、家紋の意匠に興味が引かれました。女性が家紋をあしらった装飾品を身につけるというのはどういう意識の現れだったのでしょうか?未婚女性は家紋の意匠のものを身につけたのでしょうか? 装身具から家の制度や、結婚についての女性の意識やその変遷が読み取れれば面白いと思いました。

オーストラリアでの日本人による真珠貝採取については、以下の本があります。日豪の交流史が中心です。
真珠貝の誘惑 勁草書房 (1987)


沢村 つか沙 さん

漆を何度も重ねて塗ってあるとみられる櫛、模様は反復した幾何学模様であるが、漆の重ね塗りにより、とても深みがある上品さがみられた。昨年東京芸大の一般講座の漆の講座を受けたら、その講座で三田村有純教授が漆の重ね塗りによる漆黒の深みの美しさについて熱く語られていたことを思い出した。
マラカイトは今でも安価に手に入る素材なので、ハンドリングしたような簪を作って和装に合わせたいと思いました。

頭飾りにそれほど気を使うのには感心する部分もある。現代で、例えば宝飾の展示会で見られる顧客は装飾品に興味がある層だと思って思って思い出してみても、頭飾りをつけるという人はほとんどいない。洋装だからなのかもしれないが、頭から足元までに気を使う和装ならではなのかもしれないと思いました。



Copyright(C)2013 Jewelry Cultural History Study Group All Right Reserved