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日本の装身具ハンドリングゼミ 第1回

ここでは、会員のゼミでの感想や気づいた点、意見などを掲載します。



鈴木 はる美 さん

長年掛かり収集なさった貴重な露木先生のコレクションを手にとり、先生自らの解説付の研究会に参加出来ました事は、身に余る光栄なことでした。
現存する作品を確かな資料と共の、後世に遺そうとする先生の熱意が伝わり、感動の3時間でした。厚く御礼申し上げます。

作品解説
髪飾り全盛時代・江戸後期の貴重な髪飾りの中で印象に残った1つ

作品NO6−2−2 小形厚櫛(利休形) 白甲 約8×6×1cm

櫛の目はかなり細かく、小形ながら厚さは約1pとかなり厚い。
『玳瑁亀図説』によると「文政八年右芸者大造なる粧御差止め之れ有り。以後追々小形厚き品流布す」と書きとめられ、禁令の出た1825年頃以降の物であると推定される。
日本人の髪は「髪はからすのぬれ羽色」といわれ、真黒が美しいとされた。その時代に白甲の小形ながらも厚みのある利休櫛は、他人の視線を集めた事であろう。



小宮 幸子 さん

今回ハンドリングした作品の中で一番印象に残っているのは6-4-1の象牙の櫛です。
2mm足らず程のその薄さと軽さにまず驚き、櫛全体に隙間なく描かれた金蒔絵の蛸唐草模様に目を奪われました。
淡い象牙の地色と暖かみのある蒔絵の金色が溶け合って、上品な輝きが浮かび上がるようでした。
中央に橘紋があり、色白の武家の奥方に相応しいのでは…などと想像を楽しみながら拝見しました。

江戸時代は階級や年齢によって帯の結び方や髪の結い方が異なったそうですが、装身具にもそうした違いは表れていると思います。今回ハンドリングした中では、その他2(葵の紋が5つ描かれていた櫛)は武家、6-4-2(朱塗りの櫛)は町娘、6-4-3(黒塗りの櫛)は花柳界といったように、意匠や素材、色使いなどからそれぞれの持ち主が感じられました。より詳しく調べてみたら面白いと思います。
また、擬甲について初めて知ることができ、本物との違いを自分の目で確認できたのは、ハンドリングならではでした。今後も楽しみにしております。



上村 逍 さん

<第1回の感想>
当時の代表的な素材である「べっ甲」や、それに模した「擬甲」の櫛・笄をたくさん拝見させていただきましたが、印象に残ったのは、その色使いや絵柄から身に着けていた女性たちの身分や年齢、人となりや温もりまで髣髴させてくれるからでしょうか、すべて「木地蒔絵」の櫛でした。べっ甲等に比べ当時は格段に安価だったということから、多くは、庶民(町民)に大事大事に愛用されたのだろうと想像できるところにも好感を持ちました。
特に、以下の3点を比較した時に、身に着けていた女性像がくっきりと思い浮かんできて、想像(妄想?)がふくらみ、楽しかったです。

<印象に残った作品
(1)【図6−4−2】木地蒔絵菊図櫛(月形)
木地に朱の塗りを施し、そこに、少しデフォルメされた菊の絵柄を、金・銀・黒の蒔絵で表現した愛らしい櫛。月形の優しいかたちも、若い娘のふっくらした顔かたちに華を添えてくれそうです。べっ甲より安価とはいえ、こうした櫛を差せたのは豊かな商家の箱入り娘でしょうか? 季節を先取りするのが慣わしだったといいますから、使われたのは夏の終わりか、秋の初めか・・・。奉公人をお供に従え、重陽の節句の菊見に、おめかしをしてウキウキと出かけていく様子が目に浮かぶようです。

(2)【図6-4-3】木地蒔絵夜桜図櫛(山高形)
木地に黒の塗りを施し、金ひと色の蒔絵で夜桜を描いた櫛。黒地に散らされた金粉は、春の宵の少し靄(もや)がかかった空気感まで感じさせます。さぞかし粋な、大人の女性が身に着けたのでしょう。山高の少し角ばった、それでいてなだらかな稜線を描くかたちからは、その女性(ひと)のきりっとした隙のない立ち姿と、それでいて男性の目を捕えて放さない妖艶な色香が立ちのぼるようです。

(3)【その他−2】木地蒔絵三葉葵紋櫛(亀甲形)
木地に黒の塗りを施し、三つ葉葵の紋所を贅沢な金蒔絵で描いた櫛。少し小ぶりな端正なかたち、きちんと並んだ葵の紋所。どこから見ても、これは町場の女性が使ったものではないとわかります。葵の紋の茎の数から想定するに、徳川宗家に連なる一族の紋所だろうとのこと。そうした御家から公家への貢ぎものだったのか、はたまた武家に下賜されたものだったのか・・・。居住まいを正して鏡に向かう女性の姿が、思い浮かびます。

※追記【その他−1】木地蒔絵鯉図櫛(月形)
表面から裏面にかけて一尾の鯉が泳ぐ姿を描いた、木地蒔絵櫛。背景に薄く描かれているのは、何の文様なのでしょう? 鯉の図なのだから水の流れであるはずなのに、そうも見えません・・・。ちょっと謎めいた絵柄の櫛です。
「鯉」は「恋」の掛詞、背景は「松」の文様、即ち、「恋を待つ」を意味する櫛では? と看破された和田実穂さんの慧眼には感服しました。

「滝を登ってでも貴女への恋を成就させたいのです。いつまでもお待ち申しております」なんていう意味を込めて、男性から贈られたのだとしたら・・・。素敵過ぎます・・・。

角元 弥子さん

これまで博物館等でガラス越しに眺めるだけで、様々な疑問をかかえて悶々としていたものを、先生の解説のもと実際に手にとって見ることができ、大変密度の濃い3時間でした。機会をつくって頂き、本当にありがとうございます。

第一回目の会がきっかけになり、関連する様々なことに、より興味を持つようになりました。

玩具図木蒔絵櫛)の駒の素材の件:
骨の可能性はないでしょうか。
現在、ベトナムやアフリカで水牛角の加工品を作るメーカーは副産物の水牛の骨の加工品も作っているケースが多いのでふとそう思いました。

白鼈甲の件:
会の直後にパリに参ったのですが、扇の博物館で、「blonde tortoise」といって黒い斑が一切ない甲羅を見る機会がありました。生産地は インド洋セイシェル諸島となっていました。
白甲は、まだら模様のタイマイの甲から、ひたすら白い部分を集めて圧着して作っていたと思っていたのですが、 白のみの亀の甲羅があることを初めて知りました。


さとう あけみ さん

先日は第一回研究会に参加させていただきありがとうございました。
目からウロコという思いとともに大変充実した貴重な時間でした。

日本のジュエリー文化史の分野が未開拓であり、興味尽きない 歴史探索の可能性が秘められていることを改めて認識しました。
参加者の職業も様々で異業種交換会のような雰囲気もあり それぞれの視点での研究会の成果は楽しみな展開を予感させます。
数多くの貴重な収蔵品に触れさせていただけるこのような機会は 普段ありえませんし、このような機会に恵まれ大変ありがたく思います。

未来を見据えて実現されたこの研究会へのご尽力に 最大限の敬意と感謝を申し上げます。


小岩 佐千子 さん

第一回文化史研究会に参加させていただきました。ありがとうございます。
今回、参加させていただき、30点ほどの笄や櫛、簪を手に持って裏や細部まで拝見させていただきました。
重さをや質感までも感じることができ、
制作者や使用されていた当時のこと想像することができました。
どれも細工が美しかったです。
また、時代とともに大きくなったり厚くなっていった櫛や笄、すでに使えない大きさにまで巨大化した耳かきの形だけ残る簪が、
露木先生の解説の下、何点も見せていただく事で、それらが
突然現れた奇抜なもでは無く、時間の流れによって出来上がっていったものであることが分り、身近に感じる事ができました。
それから、当時、鼈甲を模してつくられたものが『にたり』と呼ばれ、広く受け入れられていた。日本人の真偽感は現代とは違うというお話が大変印象に残っています。
とても楽しく興奮するゼミでした。
かなり影響を受けまして、こつこつと骨董市巡りをしてみようと計画しております。
第2回の研究会も楽しみにしております。


木村 愛 さん

とてもとても楽しく勉強になる研究会でした。
また、他の皆様もそれぞれ素晴らしい知識と実績をお持ちの方々で、いろいろと教えていただこうと思います。私ももっと勉強していかなくてはなりませんね。。


石井 恵理子 さん

露木先生のお話、ハンドリングは深く心に響きました。
志を同じとする皆様と、有意義な時間を共有出来たことも、一人で勉強するより嬉しかったです。
このような機会をもうけてくださって戸倉さまには本当に感謝です。
ご経歴にオークションの下見のことが載ってましたが、私もかれこれ20年くらい前から とても興味がある分野です。
いまはいろいろ手一杯で、海外に出向いてまで勉強する環境は許されませんが、どこかにまた機会があったら教えてくださいね。
どうぞ宜しくお願いします。
昨日は歌舞伎演舞からの意匠で、三番叟のお話をさせて頂きましたが、幼少から日舞を習っていて演舞目や、着物の意匠 、床山に関しては少しは語れます。
なにか今回の勉強でお役に立つことが出来ましたら幸いです。
楽屋での鬢(びん)の匂いは、今でも胸騒ぎがします。
私の宝石、装飾の原点は初舞台の楽屋で、床山さんが簪、笄を持って髪を結っていた姿に遡ります。
幼心に大人になったらこんな髪飾りをつけるんだと羨ましいやら、ちょっと怖い感じもした記憶があります。
昨日、見せていただいた長い長い笄、どきどきしました。


熊倉 英夫 さん 壽美子さん

恐る恐る参加させていただきましたが、だんだんと熱がこもって楽しい研究会でした。

裏方を身上とする僕らは、普段ジュエリー業界の仕事に携わっていませんので、 きちんとコメントを述べる資格はないなあというのが率直な感想です。
お返しにできることは、年の功(恐らく最年長だと思います)で得ている知識を皆さんにお伝えすることだけでしょう。
例えば、お話の中に出てきた言葉を補足説明することはできます。
「舌だし三番叟」は、清元と長唄の掛け合いによる人気の舞踊劇で、 今ではあまり上演されませんが、亡くなった勘三郎が好んで踊った歌舞伎です。
茶番を演じると名演技を見せる勘三郎が、最後に観客に向かって ペロッと舌を出す、アイロニーをこめた踊りです。
この図柄を取り上げた当時の鼈甲職人のお上に対する皮肉が読み取れます。

「鯉」は、生命力の強い魚として、古来中国であがめられ 鯉が滝を登りきると龍になる登龍門であると尊ばれ、歌舞伎の演目では「娘道成寺」に似ていますが、
江戸時代に武家では子弟の立身出世のため、端午の節句に鯉のぼりを飾っていたという記録も残っています。
西洋のジュエリーの図柄にスカラベや蛇が用いられたこととも関連性があると思います。


辻 洋一郎 さん

今回ゼミに参加して価値ある発見が出来たと確信している。それは、物を作る職人としてもそうであるが、価 値を創り出すという私の目標ともいえるものに対してのある一定の発見があったのだ。

それは、櫛の素材の変化、並びに形状の変化についてである。価値を創り出すというとイノベーションという言葉が最近流行っているが(イノベーションの定義については人それぞれ様々な定義があるが)、あるイノベーションについて書かれた本(クレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ」)に書かれている事と、櫛の素材並びに形状の変化が酷似していたのだ。(その本はコンピュータの変化についてであったが)

演習の中で、擬甲が鼈甲の偽物という位置づけではないという話があったと思うが、それは素材におけるイノベーションが起きたといっても過言ではないのかも知れない。

つまり、かつての装身具に於いて、馬から自動車の様な「大きな革新」ではないが、一定の商品群の中で「小さな革新」が行われていたのだ。(小さいかどうかは考察の余地があるが)

だがしかし、ここで一つの疑問が生まれる。翻って現代のジュエリー業界に於いて、なぜこの「小さな革新」は起きないのか?或いはそれが起きないのは「大きな革新」の時期に来ているからなのか?
また、かつての櫛に起きたイノベーションは職人たちから自然発生的に起きた現象なのか?それとも、現代の企業のように組織的に行われたイノベーションであったのか?というところも興味のそそられる問題である。


幸谷 由利子 さん

印象に残った一点 図6-9-1 耳かき中差簪

江戸中期、贅沢品禁止令の下、これに逆らわず、また従いもせず、「上が耳掻き、下が頭掻き」というデザインで広く流行したこの耳かき中差簪を通して、社会背景を垣間見ることができました。また、擬甲であっても「贋鼈の簪(にたりのかんざし)」と呼び、偽物扱いせず、デザインを重視し、愛用する当時の人達と、物の真贋を重視する現代の私達との価値観の違いにも面白みを感じました。


中村 園子 さん

第一回目の勉強会では、 本物を実際に手に取ってじっくり見れて、とても興奮しました。
櫛、笄が、どんどん大きくなったり、厚くなったり、 江戸の女性たちの美に対する熱い思いをヒシヒシと感じ、 過去も未来も変わらないのだなと思いました。
職人さんの修理の跡なども拝見できて、昔の人を身近に感じるのと同時に、 展示会などでは裏を返したり出来ないので得した気分でした。

とても有意義で、タイムスリップしたような楽しい時間でした。
ありがとうございました。
次回もワクワク、楽しみにしています!


岸 あかね さん

はじめての研究会、たいへん勉強になるひとときでした。
コレクションも素晴らしいのですが露木先生をはじめ、あつまられた方のコメントもきくことができました。
また、上村先生とは科学博物館のイベントにもご一緒でき、結髪や化粧をみて、ますます江戸に興味をもちました。
また次回を心待ちにしておりました。

一番、心に残ったのは、象牙に金で橘の紋が描かれた櫛です。
櫛の薄さは、象牙が貴重だということ、腕のよい職人がいたということを伝えてくれます。
また、櫛全体を埋め尽くす花唐草の文様は描いた職人の繊細さと集中力の高さを伝えてくれるように思えました。
この櫛をみていると時代は異なりますが、ヨーロッパの1910年頃のプラチナジュエリーの華奢さが連想されました。
櫛は、豊かな黒髪というよりも、少し毛量の減った白髪混じりの結髪や銀髪が似合うように感じます。
橘の家紋の家柄をたどってみたいと思いました。



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